2007年9月 Vol.39 いまが「時」NPO法人女性自立の会 理事長 有田宏美 多重債務を抱えた方と接するようになって、今年で11年になりました。相談者と接する中で知ったことは、多重債務を抱えた相談者の心の中は「孤独」と「不安」に支配されているということです。 長い時間、誰にも打ち明けることができぬまま債務を抱え、意を決して相談に訪れた方は一応に「もっと早く相談にくれば良かった」と、解決の方法があることに安堵の表情を浮かべながらも、相談する勇気が無かった自分への後悔を覗かせます。 今から5年ほど前に、当会の活動記事が若い女性向けの雑誌に掲載されました。掲載された直後、まだ20代前半の女性が沢山相談に見えられました。 あれからもう5年、彼女たちは元気で頑張っているだろうか?と、時々懐かしく思い出すほどの時間が過ぎた先日、その雑誌の記事をこの5年間、大切に持っていて、電話番号も住所も変わった当会を探して相談に見えられた女性と会いました。 彼女の債務は、雑誌を手にした5年前は200万円程だったのに、現在の債務は450万円を超えていました。彼女は、当時を振り返り、「あの頃は返せると思っていたんです」と話してくださいました。 5年前、借金の特集が組まれたその雑誌を購入し、この5年間その記事を大切に持っていたのだから、その頃すでに、心のどこかに危険信号を感じていたはずです。でも、その不安に蓋をしたまま「いつか返せる」「返したい」という一心で家族の誰にも相談せず、先月まで返済を続けてこられたのでしょう。 相談が終わり席を立った彼女は、これまでの相談者と同様に「もっと早く相談にきていれば良かった・・・」とつぶやきました。そして私はいつものように「大丈夫!今日が「時」だったんだよ。もう、昨日と同じ明日を送るのだけはやめようね」と答えました。数日後、彼女から長いメールが届きました。 今、彼女は、借金の解決、そして生活立て直しの第一歩を自らの意志で歩み始めたのです。 多重債務の問題は、「まさか自分が」という不安を打ち消しながら自転車操業を続け、数年後、来月の支払いができない!という現実にぶつかったとき、初めて向き合わざるおえなくなります。まず債務を抱えた本人が、「先送りにしない」「逃げない」「諦めない」で問題と向き合うことができたなら決して遅くはない。人生はやり直せると私は信じています。
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